(美術工芸編)

 
昨年の大河ドラマ「利家とまつ」で一躍脚光を浴びた金沢。
 金沢へ行くことになった理由は、伝統工芸の宝庫だからだ。
加賀友禅・九谷焼・金箔・漆工芸など町中が伝統工芸なのだ。
その中心に金沢美術工芸大学がある。今回は工芸科の山村
助教授を訪ねた。行きは上越新幹線ときMAXで越後湯沢
そしてほくほく線で金沢へ。4時間の旅だ。
 金沢駅から自転車で30分金沢城・兼六園のある台地の上に美術工芸大学が
ある。しかし、その前に兼六園を訪ねた。 6つの風光明媚さを兼ね備えたと
いう兼六園。雪吊りが有名。ただし今年は全く雪がなかった。左下は金沢城と
兼六園の案内。中央下は、ヤマトタケルの像ととなりの雪吊り。右下は灯籠から
見た雪吊り。やはり兼六園はいい。天気もこの季節にはめずらしい快晴。
 
きたさん紀行   金沢編
 金沢美術工芸大学は、金沢市立の美術工芸大学。国公立の美術系大学は、
東京芸術大学・京都市立芸術大学・愛知県立芸術大学・沖縄県立芸術大学
の4つしかない。その中でも市立というのは金沢の土地が生み出した大学で
あるということだ。訪れた時卒業制作展が行われており、見学者も多く活気
あふれる大学となっていた。金沢美術工芸大学の工芸科は一学年20名。
漆工芸をはじめとして、いろいろな研究室がある。教授陣は12名。なんと贅沢
な環境だろう。一学年100名ほど。高校よりも少ない。2年生から希望する
研究室に入り4年生の夏ぐらいから卒業制作に入る。大学院に進む学生が
多いということだ。就職率も非常にいいそうだ。
 右下の写真は今回お世話になった山村慎哉助教授。漆といっても伝統的な
ものでなく、ジュエリーな感じの小さな作品が多いそうだ。卒業作品展では
4年生のかんざしが展示されていた。調布市に生まれたというHPの記事から
今回見学をお願いすることになった。右上の写真は、発泡スチロールに乾漆
をほどこした作品。軽いそうだ。左下はデザイン科の作品。自転車もある。
中央下は日本画のコーナー。
 美術工芸大学では、作品展だけでなく、陶芸などの製作室や焼成室など
も見学させていただいた。美術系の大学にいくことはまずない私だったが
楽しく見学することができた。山村助教授の部屋で、漆についてもお話を
うかがった。
 漆の原液はニスのような飴色だが、それに鉄を加えると黒、水銀などで
朱色、カドミウムなども使われていたが毒性を考え現在ではいろいろな
顔料が使われているそうだ。黄色や緑は出にくく、白はできない。二酸化
チタンなどの白色顔料を使っても肌色にしかならないそうだ。では白い色は
どうするのか。それは、たまごの殻を細かくして貼り付けるのだ。きらきら
した光沢は貝殻が使われている。
 うるしは、かぶれるという話を聞いているが、最初はかぶれてもだんだん
平気になるそうだ。免疫なのか。不思議だ。
 2日間の忙しい日程のなか、有意義な時間を過ごさせていただいた。
 山村先生本当にありがとうございました。
 金沢といえば金箔。金沢駅西口から約10分
のところに金沢市立安江金箔工芸館がある。
私財をはたいて安江孝明氏が作り後に金沢市
に寄贈された工芸館。
 左は、金箔の種類を示す。金箔は金と銀と銅
の合金なのだ。その成分で1号色から4号色まで
あり、これ以下の含有量になると金箔といわない
定色まである。
 
 左上は、安江孝明氏の写真。中央上は見学するといただける金箔入りの
お茶とお菓子。右上は3寸6分の箔をつくる工芸館職員の女性。手際の
良さにびっくり。かすの金箔を手に取ると少しこすっただけで何もなくなって
しまう。小豆大の金が畳一畳にまでのばされるのだ。1万分の1ミリの世界。
蛍光灯にかざすとむこうがが透けて見えるほどの薄さだ。しかし、その厚さ
の中に原子は750層もあるのだ。原子はそれほど小さいのだ。静電気が
起きないように竹などの道具を使い、息は吹きかけない。私には息を吹き
かけているようにしか見えないが「風」を送っているのだそうだ。すごい技術!
 安江金箔工芸館をあとにして、次は高岡製箔(株)の経営する金箔の
展示販売をしている「箔座」、「銀の波」、「あぶらとり紙箔座」を訪れた。
そこには、豊臣秀吉の茶室を1.5倍にした金の茶室があった。一つの
壺だけで3000万円という説明を聞いてたまげた。中央上は五重塔。
2000万円だそうだ。まいった。右上は金箔をたたいてのばす機械。
金箔と金箔の間に入れる和紙が、あぶらとり紙として使われている。
使い込んだものの方がいいそうだ。ただし、現在では硫酸紙などが
使われていて、昔からのものは伝統工芸として残っているだけだそうだ。
 
 金沢には、加賀友禅や九谷焼などまだまだ多くの伝統工芸がある。
しかし、今回の旅では漆と金箔に絞って見学をした。そのほかにも
大樋焼という茶器で使われる焼き物をつくる10代目大樋長八郎の
作品を展示する大樋美術館にも訪れたが写真撮影禁止でだったため
ここに紹介することはできなかった。
 2日間の短い旅ではあったが有意義な時を過ごすことができた。
次回金沢を訪れるチャンスがあればもっとのんびりと見学したいと
思いながら、金沢をあとにした。

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きたさん紀行