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 今年で20回目を迎えた高校野球研究会。
都立高校の甲子園出場を目指して発足した会。
長い歴史を重ね、城東高校の2度の出場を
果たした。
 毎年、いろいろな講師の方に講演をお願いし
そのあと近況報告を兼ねた忘年会となる。
 今年は、この研究会の草創期に関わった一人の
元フジテレビアナウンサー松倉悦郎さんが講師。
現在は姫路で僧侶となられている。
 結城思聞という名前だ。
 いろいろな人との出会いについて静かに熱く
語って下さった。

 左の写真は長嶋茂雄さんとの出会いに
ついて語る松倉さん。
 長嶋さんが、原監督にバトンタッチする
前日。たまたま神宮球場で見かけて
今年で監督を辞めるのではないかと
感じた松倉さんは長嶋さんに
「やめるんですか?」と尋ねたところ、
 嘘をつけない長嶋さんは言葉を
詰まらせてしまいました。
 実は翌日に記者会見の予定だったのだ。
 松倉さんもその席で定年を前に自分も
会社を辞めることを長嶋さんに告げたの
だそうだ。
 左の写真の色紙は、長嶋さんが松倉
さんに書いた色紙。長嶋茂雄の名が
真ん中に書いてある。さすが長嶋さん!
 後日談がある。
 みんなで花の好きな長嶋さんに
胡蝶蘭をプレゼントしたところ、
「僕は花が大好きでね。すばらしいですね、
このカトレアは!」一同呆然。
 さすが長嶋さんは伝説の人だ。 
 
 1時間半の講演の中でいい指導者とはというテーマで、早稲田を代表する3人の
指導者を紹介した。
 マラソンの瀬古選手を育てた中村清、ラグビーの大御所大西鐵之祐、野球界を
代表する石井藤吉郎。それぞれ個性あふれる大指導者。それぞれの松倉さんとの
エピソード。何が指導者にとって大切なのかと問われ「それは見返りを求めない
無償の愛だ!」と答えたそうだ。親が子に対して思う気持ちと同じだ。
 3人の指導者に共通しているのは戦争に行っていること。中村さんは中国で一般
市民を大切にした。大西さんは仲間を裏切られないので捕虜になっても嘘を突き通した。
軍服にラグビーボールのもようを縫い取っていたらイギリスの将校に「おまえはラガー
か?!」といわれ何事もなかったようにご赦免になった。
  
 ここでも死と直面することでわき出てくる生きること生きていくことを考える。仏教では
生死一如(しょうじいちにょ)というそうだ。人間は生まれてきたらあとは1回死ぬだけ。
それに向かって突き進んでいる。そこからどう生きるかということが始まる。難しい。

 長嶋茂雄さんの監督室にあった一篇の詩を最後に書いておきたい。
 明治大正昭和の思想家後藤清香さんの詩である。

  本気ですれば
  たいていの事はできる
  本気ですれば
  なんでも面白い
  本気でしていると
  だれかが助けてくれる
  人間を幸福にするために
  本気ではたらいているものは
  みんな幸福で
  みんなえらい

 こうしたエピソードは、松倉さんの著書「値遇(ちぐう)」(私を変えた仏縁・人縁)
 (ソニー・マガジン社)本体1400円に書かれています。興味のある方はご購入下さい。
きたさん紀行
調布北高野球部
 逸見政孝さんとは早稲田大学からの
友人でありライバル。いっしょにフジテレビ
入社。あの壮絶なガンとの戦いが仏門へと
きっかけともなった。
 入社試験(8次まであるそうだ)で2人で
受験。質問者が「同じ学科の学生が受験して
いるがもし一人しか受からなかったらどうする
?と聞かれて、松倉さんは「それは困ります。
二人で一生懸命アナウンサーになるために
勉強してきました。二人とも落とすか二人とも
入社させて下さい。」と答えたところ。「いい
友達をもったな」といわれともに合格したそうだ。
 右の写真は、戦前の名プレーヤー松井栄造
の母に宛てた手紙を披露する松倉さん。
戦場に散った名選手の最後の手紙。誠実な
人柄がにじみ出ている文章。20歳を少し過ぎ
たときにこんな文章が書けるのだろうか?
と思ってしまった。
 死を意識することで生きることが見えてくる。
毎日を大切に生きることができるのだなと感じた。
高校野球研究会 2004
 フジテレビでの最初の仕事の話も
印象的だった。
 当時「3時のあなた」という小川宏が
司会の長寿人気番組があった。
 そのひとつのコーナーを担当すること
になった松倉さん、ある脳性マヒの子の
詩に遠藤実さんが曲をつけ、森昌子さん
が歌うという企画があった。
 「ごめんね、お母さん」ではじまる詩と
それに答える母親の詩。「ごめんね」で
はじまり「ありがとう」で結んだこの詩を
聞いたとき涙が止まらなかった。
 実際に森昌子さんも声を詰まらせ
なかなか歌いきることができなかった
ようだ。
 左の写真は、懇親会でのツーショット。


 1時間半があっという間と感じた
講演が終わると次は自己紹介。
 東京だけでなく、神奈川・埼玉・
大阪、静岡などいろいろなところ
から監督さんや部長さんや
野球好きな方たちがやってくる。

 そのあとは懇親会。松倉さんも参加された。
右の写真はこの夏、最後の夏にベスト8に
進出した世田谷工業の長嶺先生。研究会の
幹事の一人だ。
 若手からベテランまでたくさんの方とお話が出来る。
一年に一度の楽しい会だ。
 懇親会の締めは、この研究会の創始者でもあり
第1回目の講師でもある樋口先生、そして縁の下で
支えてきた荒木先生。30回に向けてこれからも
よろしくお願いします。
 赤坂の街は国会議事堂もライトアップ。クリスマスツリーも
きれいだ。まだまだ野球談義がつきない面々は二次会へと
くり出していった。