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 化学や科学の面白い話題などを書いていきます。

目次

(1)化学と私                    (3月14日)
(2)生涯現役・90歳のエンジニア         (3月23日)
(3)相対性理論                   (4月 4日)
(4)南半球では流しの水は右向き・左向き?  (4月11日)
(5)フッ素と水道の話               (4月15日) 

化学と私
 
 いくら野球が好きでも私は化学の教員です。もちろん化学も好きです。

 小学校時代も、科学クラブに入り(実際はアイスキャンディーを作りた
かっただけ) 化学が好きだから、理科系の大学そして応用化学系の
学科を選び(実際は、一番入りやすかったから)大学院まで進学しました
(実際は、内部選考でほとんど無試験で進学できたため)。

 卒業論文は「W−Ti−O系の相平衡」(タングステン、チタン、酸素)
これは博士論文の手伝いでした。修士論文は「La−S−O系の相平衡」
(ランタン、硫黄、酸素)、先輩の引き継ぎで何とか間に合いました。
一応、その年の秋の東北大で行われた熱測定学会で発表しました。

 就職後、高校時代の担任が化学の教師だったため、教員になってから
研究会への参加を勧められました。文部省(今の文部科学省)の奨励研究
費をとるために人数調整のためにかり出されたわけです。「とにかく来るだ
けでいい。何もしなくていい。」という甘い言葉に引き寄せられ参加しました。

 しかし、ただ参加するだけですむわけはありません。いろいろな話題に
ついて勉強させていただきました。一緒に研究することができました。
「プラスチックを使ったリサイクルを考えさせる教材の開発研究」や
「留学生に対する化学の教育法の開発」など文部省の奨励研究費を
使っていろいろな先生方と知り合うことができました。いい経験でした。

 ひょんなことから、来年度から2年間、日本化学会の化学教育誌である
「化学と教育」の編集委員になることになりました。今までにない経験を
することができると思います。忙しいですが頑張りたいと思います。

 これからも化学の面白い話を書いていきたいと思います。
 よろしくお願いします。

(3/14)
生涯現役・90歳のエンジニア

 先日、NHKの人間ドキュメントという番組で、90歳の現役エンジニアを
追う番組でした。定年になっても会社から現役でいてくれと頼まれるほどの
おじいさんとはどんな人かと思ってみました。

 スペースシャトルに使われるような部品を作ったり最先端技術をもつ
職人。若い技術者たちのアドバイザーの役目をするはずが、そこでとど
まらずに自分でやってしまう。そんな現役エンジニアなのです。

 ある時、コンビニエンスストア用の小型冷蔵庫の開発を依頼された会社
は若手技術者に担当させます。試作器ができあがり、そのおじいさんに
見せると接点のところが熱を持ってしまうだろうと予言します。
 若手技術者は、気にとめずに試運転するとやはり接点の部分が過熱
して運転できなくなりました。おじいさんは自作の接点を若手技術者に
見せますが日程の関係や予算の関係でその接点を使うことはできません。

 それでもおじいさんはあきらめません。消費電力を抑えるにはどうしたら
良いかを考え、モーターの回転軸とまわりの磁石との距離を最初の1cm
から0.5cmにしてみたらと提案します。そして、試作器が完成し試運転
すると見事過熱することなく開発に成功しました。

 このおじいさんは、いろいろな展示会にも参加し、今はアルミに変わる材
料の開発に興味を示している。90歳でまだまだ、バリバリの現役なのです。

 この番組を見て、おじいさんのバイタリティーに驚きました。いろいろなこ
とに興味を常に持ち、行動していく姿勢が若さの秘訣であり、生涯現役で
いられるパワーになるんだなと感じました。
 また、知識だけをたくさん持っているだけではだめで、やはり長年の経験
によって培われてきた技・ノウハウは絶対に必要なのだと痛感させられ
ました。

 私も教師生活20年になりましたが、常にいろいろなことに興味を持ち、
チャレンジして生徒に興味を持ってもらえる授業ができるように頑張りたい
と思っています。また、教師は授業だけでなく生きざまを見せることも大切
ではないでしょうか。
 「化学は楽しい」「野球は楽しい」「人生は楽しい」と感じてもらえる人間
になりたいと思っています。

(3/23) 
相対性理論

 アインシュタインの相対性理論を知っていますか。
 20世紀の大物科学者アインシュタインは相当な変わり者だったようです。
 そんな話はさておき、相対性理論について簡単に説明します。といっても
門外漢の私がわかる程度ですが、シンプルに説明します。

 私たちが、中学高校で習う理科や物理の力学はニュートン力学です。
あのリンゴの落ちるのを見て万有引力を発見したとされる大科学者です。
運動の第1法則は慣性の法則といわれ、力が働かなければ物体はそのまま
の状態を保ち続けるというものです。第2法則は、運動の法則といわれ、
F=ma という式でまとめられます。物体の加速度は、与えた力に比例し、
質量に反比例するというものです。第3法則は、作用反作用の法則といわれ
ています。たとえば、壁を手で押すと同じ力で壁が手を押し返すというものです。

 そのニュートン力学では、物体の質量、物体の長さ、時間は絶対的なもので
不変であるという前提です。しかし、アインシュタインはこの3つの物理量は
あくまで相対的なものであるといいました。具体的にいうと次のように
まとめることができます。

 @ 光の速度は、不変で秒速30万km(1秒で地球を7.5周できる速さ)
   であり、光より速い速度は存在しない。
 A 光の速度に近づくにつれて、物体の質量は重くなる。
 B 光の速度に近づくにつれて、物体の長さが短くなる。
 C 光の速度に近づくにつれて、時間が遅く進む。
                     
 物体の持つエネルギーは E=(物体の質量)×(光の速度の2乗)になり
ます。とてつもないエネルギーです。

 むかし、チャールトンヘストン主演の「猿の惑星」という映画がありました。
宇宙船で冬眠してしたら、事故である惑星に不時着。猿が支配する惑星
だった。いろいろな戦いの後、人が勝利したがそこには自由の女神がたっ
ていて、その惑星は地球だったことがわかった。核戦争の末滅びたあとの
地球だったというものです。これは、この相対性理論を利用した映画です。
光速に近い速度で進む宇宙船の中では時間がゆっくり進むので未来へ
行くことができるのです。(実際にはそうならないらしいのですが)
 つまり、浦島太郎になってしまうのです。竜宮城で楽しく過ごす間に
時間が過ぎてしまい。浜に帰って玉手箱を開けるとおじさんになってしまう
のです。

 アインシュタイの相対性理論とは違う相対性理論もあります。これは、
時間の相対性理論というものです。
 楽しい時間はすぐ過ぎてしまいますが、つまらない授業はなかなか
終わりません。時計が止まっているように感じます。
 教員をしている私としては、短く感じることができる授業をしたいのですが
なかなかできていないのが実体です。生徒にやる気を起こし、楽しく
参加できる授業を目指して頑張ります。

(4/4)  
南半球では流しの水は右向き・左向き?

 台風や低気圧に吹き込む風は、北半球では左向き、南半球では右向きに
なります。これは、地球が西から東に回転(自転)しているために生じる
コリオリの力が働くために起こります。

 物理の授業でも演示実験をしますが、回転する台の上にボールを転がすと
あら不思議。ボールの軌道はコリオリの力を受けて曲がってしまいます。

 この現象は結構有名なので、南半球に旅行をする人たちの多くはあること
を試してみます。それは、ホテルなどの洗面所の流しやバスタブに水をためて
栓を抜いて水がどちら向きに渦を巻くのか確かめてみるのです。
 この私も新婚旅行でいったオーストラリアで実際にやってみました。私は
オーストラリアに行ったら、この実験をするのと南十字星をみるのが夢でした。
 運良く右向きに渦を巻いたときは「やっぱり南半球だからな!」と納得します。
左になったらなぜだろうと考えます。はたしてどちらが正しいのか。

 答えは、どちらになるかわからないです。

 台風や低気圧の場合その大きさは何百キロになります。その大きさになって
初めてコリオリの力は目に見える力となるのです。何十センチの世界では
その力は微々たるもので右向きになるか左向きになるかはその時の穴の
状況とか最初の水の流れで決まります。ですから、南半球だろうが北半球
だろうが、どちらになるかはわからないのです。

 この現象は、有名なのであのカンタス航空の乗務員も定期的に調べている
そうです。その結果もまったくの半々なのだそうです。面白いですね。

 自然現象から法則を見つけるためには、やはり実験することが大切です。
帰納的な考え方と演繹的な考えの2つのやり方がありますが、どんなこと
でも実際に経験すること(実験)は何事にもかえがたいことですね。

(4/11)
フッ素と水道の話

 皆さんは、フッ素という元素を知っていますか?

 「元素記号は、F。原子番号9。原子量は19。ハロゲン元素の1つで常温で
特有の臭気を持つ黄色の気体。反応性が高くフッ化物をつくる。天然には
ホタル石、氷晶石の主成分として産出される。」(三省堂化学小辞典より)

 フッ素は、不思議な元素で単体は非常に不安定ですが、化合物の一部は
逆に非常に安定します。例えば、フライパンなどに使われるテフロン加工は
フッ素化合物を利用しています。有機化合物でありながら耐熱性にも長けて
います。さらに今では、フッ素を使った水をはじく繊維も開発されています。
 
 そして、忘れてならないのがよくCMで聞く「フッ素配合の歯みがき」という
ものです。歯みがきだけでなく、歯医者さんではフッ化ナトリウムを就学前の
児童に塗布しています。虫歯予防のためです。ところが、10年ぐらい前に
フッ化ナトリウムと間違えて劇薬のフッ化水素酸(フッ酸)を塗布してしまい
児童が死亡する事故がありました。医療ミスの草分けのような事故です。
 
 つまり、フッ素は虫歯予防に効果があることが分かっています。そこで、
すでにアメリカでは水道水にフッ素をあらかじめ含ませています。「虫歯予
防のために日本でも
フッ素を入れよう!」という動きがあります。

 しかし、フッ素を水道水に入れることが本当に虫歯予防につながるのか
心配する人たちもいて日本ではまだ実行されてはいません。

 フッ素の恐ろしさを考えさせるテレビのレポートがありました。
ネパールのある村には水道がありませんでした。そこで地下水をくみ上げる
ことで村に水道がやってきました。村人は喜んで水を使います。
 ところが、しばらくたつと村中に奇妙な子供たちが現れ始めました。
普通に立つことができず座ったまま手でこぐように移動します。また、歯も
黒ずんでもろくなっています。難病が発生したのです。何が原因か調べた
ところなんと、地下水の中に含まれるフッ素の量に問題があったのです。

 実は、フッ素の含有量が1ppmまでは、歯や骨の強化につながるのです
が、1ppmを越えると逆に、骨や歯がもろくなるのです。自力でたてない
子供たちは、実は高濃度のフッ素を含む地下水が原因だったのです。
水道のない村によかれと思って引いた地下水が思わぬ災難をつれてくる
ことになりました。地下水を使わなくなって病状はやや改善されましたが、
一度弱くなった骨は元に戻ることはありません。

 この話を聞くと、日本の水道水にフッ素を含ませるのが本当に良いこと
なのか考えさせられます。

 昔は、水道水もおいしい日本でしたが、今では家庭でも簡易浄水器が
使われるほどまずくなっています。水道水の安全性が問われる時代です。

 皆さんは、この問題をどう考えますか?

(4/15)